【書評】瀧本哲史著『僕は君たちに武器を配りたい』

GWはヒマなのでブログを更新しまくっております。笑 

さて、本日読んだ本はコチラ。京都大学准教授・瀧本哲史氏の本です。

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あえてジャンル分けするならば、いわゆる「自己啓発本」の類に属するのだと思いますが、本書は毒にも薬にもならない安っぽい自己啓発本とはワケが違います(ちなみに、瀧本氏は、昨今のいわゆる自己啓発本や勉強本のブームは「不安解消マーケティング」の産物にすぎないと一蹴しています)。

同氏の著書はこれまでにも数冊読んだことがありますが、どれもその一文一文から同氏の深い知性と鋭い感性が感じられます。東大法学部の学士助手(!)やマッキンゼー出身といった輝かしい経歴を引き合いに出すまでもなく、「真に”頭のいい人”ってこういう人のことを言うんだろうなぁ」と読み返すたびに思います。

  

瀧本氏は、「より安く、よい良い商品」が求められる資本主義社会の下では、個性のないものは全てコモディティとされる。つまり、資格やTOEICといった誰にでも取得できるもので自分を差別化しようとする限り、コモディティ化した人材となることを避けられず、最終的には「安いことが売り」の人材になるしかないと主張します。

 

そして、資本主義社会で稼げる人材のタイプとして、以下の6つを挙げています(ただ、このうち①②については、社会の劇的な変化に対応できず生き残るのが難しくなるだろうとも述べています)。 

  1. 商品を遠くに運んで売ることができる人(トレーダー)
  2. 自分の専門性を高めて、高いスキルによって仕事をする人(エキスパート)
  3. 商品に付加価値をつけて、市場に合わせて売ることができる人(マーケター)
  4. まったく新しい仕組みをイノベーションできる人(イノベーター)
  5. 自分が起業家となり、みんなをマネーじ(管理)してリーダーとして行動する人(リーダー)
  6. 投資家として市場に参加している人(インベスター)

 さらに、これからの資本主義社会で生き残っていくためには特に⑥が重要で、「市場の歪み」にいち早く察知し、そこに勝機を見い出す「投資家的な発想」が必要であるとします。なぜなら、資本主義社会では、全ての人間は、究極的には投資家になるか、投資家に雇われるか、どちらかの道を選ばざるをえないからだ、と。

 

さて、本書では、案の定というべきか「コモディティ化」する職業・スキルの一つとして、弁護士資格が挙げられています。

弁護士においても、その資格を手にすること自体には、ほとんど意味がないことがお分かりいただけただろうか。

資格や専門知識よりも、むしろ自分で仕事を作る、市場を作る、成功報酬ベースでの仕事をする、たくさんの部下を自分で管理する、というところにこそ、「付加価値」が生まれるのである。

それに対して単に弁護士資格を持っているだけの人は、まったく価値のない「野良弁」になってしまう。稼げない「野良弁」と、すごく成功している弁護士を分けるのは、弁護士資格ではなく、そうした新しいビジネスを作り出せる能力があるかどうかなのだ。

そこで求められるのは、マーケティング的な能力であり、投資家としてリスクをとれるかどうかであり、下で働く人々をリーダーとしてまとめる力があるかどうかだ。高学歴で難度の高い資格を持っていても、その市場には同じような人がたくさんいる。たくさんいる、ということならば、戦後すぐの、労働者をひと山いくらでトラックでかき集めたころとなんら違いはないのである。

「弁護士いる?弁護士。日給1万5000円で雇うよ」といった具合に。(本書148頁)

 

考えてみれば当たり前のことですが、(日本全体の人口が減少しているにもかかわらず)毎年約2000人が弁護士になる社会では資格そのものの希少性はなく、「弁護士」というカテゴリー(資格)のみで差別化できるはずがありません。また、弁護士の中でも、誰にでもできる分野(あえて具体的には挙げませんが)にいくら注力したところで、結局は価格競争にしかならないということは、今の弁護士業界を見ていても明らかなように思います。まさに、瀧本氏のいう「コモディティ化」そのものです。

一般に弁護士業界では、個々の案件に真摯に向き合い、自己研鑚を怠らずに努力し続ければ食いっぱぐれることはないという考え方が根強いように思います。私自身もそれはそれで真理だと思っていますが、今後はそれだけではダメなのだろうな、と。

 

そういった中で、今現在「たくさんいる弁護士」の一人にすぎない自分は、今後どうやって差別化を図り、生き残っていくか。個別分野のスキル(知識・経験)で差別化することが難しい(すぐにコモディティ化する)のであれば、ビジネスモデルや案件ソースによる差別化が一つの鍵になりうるのではないかと思うところですが、まだ「これだ!」という解は見つかっていません。まあ、見つかってもブログには書きませんけどね。笑

 

少し長くなりましたが、同業者の方もそうでない方も、現状に閉塞感を感じている方は、騙されたと思って本書を読まれてみてはいかがでしょうか。きっと大きな「武器」を授けてくれることでしょう。

水野祐弁護士の「情熱大陸」を視聴して

シティライツ法律事務所代表・水野祐弁護士の情熱大陸、昨晩しっかり視聴させていただきました。

 水野先生のご活躍は以前から存じあげていたつもりですが、普段のお仕事やそれに対する想いを映像としてあらためて目の当たりにすると…いやはや、「かっこいい!」の一言に尽きますね。ルックスもそうですが、何より生き方がかっこいい。

以下のように、グサグサと胸に刺さってくる言葉も多かったです。

  • 「いいものはいい、OKなものはOKだと、言えるような空気を作っていかないと。」
  • 「『法令遵守法令遵守』って言うけど、それって『思考停止』の言い換えじゃないの?」
  • 「法律の答えは言えますよ?これやっちゃダメって。でもこのカルチャーとかビジネスにおいて、もっと踏み込むべきところもあるんじゃないかって。そこが一番楽しいというか、面白みのあるところですね。」
  • 「世の中にあまりにも”良いもの”が沢山あるっている感覚があって、新しいものを生み出している人をサポートしたいっていう気持ちがありますね。それはなんでかっていうと、自分がそういうものを見たいから。で、沢山”良いもの”が出てくる、そういう世の中になってほしいと思うから。」

何より印象に残ったのが、相談者の作品を見ているとき、水野先生が目をキラキラさせて本当に楽しそうにしていたこと。その表情から、水野先生はアートやカルチャーが本当に好きで好きでしょうがなくて、自然な流れで今のお仕事のスタイルにたどり着いたのだということがよく伝わってきました。好きでやっているからこそ、まだお若いにもかかわらず、この分野のトップランナーになれたのだと。

 

最近薄々と感じているのは、専門分野に対する興味の根源が、特定の社会事象への興味や問題意識にある人は強いなということです。

私のような法学部→ロースクール→司法修習と”純粋培養”されてきた人は、ともすれば「会社法に興味があるから企業法務に」「刑事系が得意だから検察官に」「知的財産法に知財ローヤーに」という風に、法分野そのものに対する興味関心から自分の専門分野やキャリアを考えてしまいがちな面があるように思います。

しかし、そうではなくて、法分野以前の生の社会事象(水野先生でいうならアートやカルチャー)に対する「好き」「面白そう」からキャリアを考えられる人は成長が早いような気がします。まさに「好きこそものの上手なれ」で、何事もそれが好きで好きでしょうがなく、困難を困難と思わずにやっている人には敵わないのだと思います。

 

さしあたり自分にとっての「好き」「面白そう」はファイナンス・金融ですが、水野先生と同じくらいのレベルで没頭できているか、その分野の(法律家ではない)プレーヤーの人から真に信頼されるような仕事ができているか、常に自問しながら日々の業務に励んでいきたいと思いました。

 

司法試験受験生・司法修習生の就職活動③〜一般企業(インハウス) ※旧ブログ記事転載

1 インハウスローヤー(企業内弁護士)の現状

いわゆる法律事務所ではなく一般企業等に勤務する弁護士を「インハウスローヤー(企業内弁護士)」といいますが,近年そのような弁護士が急激に増えています。2014年4月14日付日経新聞によれば,インハウスの人数が今年初めて1000人を越え,5年前と比較して約3倍に増加したそうです。

 

従来,インハウスといえば,四大事務所等において長く企業法務案件に従事したベテランの弁護士が,企業側に請われる形で移籍するケースがほとんどでした(らしいです)。現在でもそういう形でインハウスに転向される方は一定数いらっしゃるとは思いますが,ここ数年におけるインハウスの急増は,法律事務所勤務を経ることなく弁護士登録と同時に企業に就職する「新人インハウス」の増加によるものと考えられます。日本組織内弁護士協会(JILA)が実施したアンケート調査においても,インハウスのうち弁護士経験年数5年未満の者の割合が53%となっており,法律事務所での勤務経験のない者の割合も45%となっていることがわかります。

 

また,このような新人インハウスの増加を受けて,慶応大学,神戸大学等一部の法科大学院では,インハウス志望者向けの授業を開講するなどの取り組みが始まっているようです。このような流れは今後もさらに加速すると思われ,企業側はインハウスの採用数を拡大していくでしょう。

 

司法修習生の現場レベル(?)では,まだまだインハウス志望はマイノリティという印象ですが,あと数年もすれば司法修習生側の認識も確実に変わってくるだろうと思います。

 

これから就職活動をされる司法試験受験生の方は,法律事務所だけでなく一般企業も有力な進路候補として検討対象にしてみてはいかがでしょうか。

  

2 東京三弁護士会合同就職説明会の重要性

インハウスの就活において,最も重要なイベントが「東京三弁護士会合同就職説明会」です。ぼくがインハウスに興味を持ったのも,この説明でとある企業のブースに立ち寄ったことがきっかけでした。

 

この説明会には,一般企業だけでなく法律事務所もブースを出しているのですが,インハウスに少しでも興味があるのであれば,以下の理由により,一般企業のブースの方を中心に回ることをオススメします。

  • 出展企業は有名上場企業が中心であるが,インハウスの採用情報はこの説明会でしか得られない可能性が高い(HP等にインハウスの採用情報が掲載されることは基本的にない)。
  • 企業については説明会に参加したこと自体が採用上有利な事情となりうる(説明会参加をエントリーの条件とする企業もある)。これに対し,法律事務所の多くはひまわりナビやアットリーガル等でも募集をしており,説明会不参加でも応募は可能であるし,参加の事実自体が採用上有利に考慮されることはおそらくない。
  • その企業におけるインハウスの業務内容を直接聞くことができる機会は他にない。法律事務所の業務は(取扱分野の差はあれど)基本的にどこも同じようなものであるが,インハウスの業務内容は企業によってかなり異なるので,しっかり情報収集しておく必要がある。

出展企業は事前に公表されるので,その時点で具体的に応募したいと思う企業があるのであれば,その企業の事業内容や最近のニューストピックについて事前に研究して臨むといいでしょう。

 

説明会では必ず質問タイムがあります。そこで担当者に「あーこの人はウチのことをよく調べてるなあ。ウチに興味をもってくれてるんだなあ」と思わせるような質問をすることができれば,担当者から顔と名前を覚えてもらえるかもしれません。

 

ぼくの印象としては,企業側は東京三弁護士会合同就職説明会にかなり気合を入れて参加しています。いい人がいれば,その場でチェックしておくくらいのことは普通にやっているだろうと思います。そして,当たり前ですが,説明会でプレゼンや司会をしている人は,採用担当者であるなどそれなりに採用の判断に影響力を持っている人であり,後の面接で顔を合わせることになります。

 

そうであれば,良い質問をするなどして担当者にアピールしておくことは,後の選考を有利に進めるための戦略として有効だろうと思います。もし公式の質問タイムで質問しにくいようであれば,後で個人的に質問するという形でもいいでしょう(場合によってはこちらの方が効果が大きいかも)。閉会間近になると人も減ってくるので,その時間帯なら担当者を捕まえやすいかもしれません。

 

後述しますが,つまるところ企業が採用上最も重視するのは,その企業で働きたいという熱意ですから,それを具体的な行動で示しておくことは非常に重要だということですね。

 

ちなみに,今年の開催日は10月13日(月)だそうです。合格発表前後から参加法律事務所・企業が公表され,エントリー受付が始まると思いますので,忘れずにエントリーしましょう。

 

3 ひまわりナビ・転職エージェントの活用

東京三弁護士会合同就職説明会以外でインハウスの採用情報を入手する手段としては,日弁連のひまわりナビ(企業用)と転職エージェントの活用が考えられます。ひまわりナビについてはサイトを見ていただければ分かると思うので,ここでは転職エージェントの活用について説明しようと思います。

 

転職エージェントとは,その名の通り基本的には経験弁護士の「転職」をメインとする人材事業者ですが,最近は司法修習生向けの求人も増えているようです。弁護士(修習生含む)の転職エージェントとしては,MS-Japanが有名です。無料で紹介を受けられるので,登録しておいて損はないでしょう。

 

大まかな流れとしては,最初にエージェントと会って経歴や希望等に関する簡単な面談を行い,その後エージェント側から希望に合った求人が随時紹介され,エントリーしたい求人があればその旨エージェントに伝えるという感じです。ぼくは結局1件もエントリーしなかったので,その後の流れについてはよく分かりませんが,基本的には書類選考→適性試験→面接複数回という一般的な選考過程をたどるようです

 

紹介される求人には,上場企業のほか非常場企業のものも多くあります。当然ながらインハウスがいない(インハウスを初めて採用する)企業も多くあります。

このような企業では,新人弁護士が初のインハウスとなる場合,周囲の過度の期待と自分の能力とのギャップに苦しむというケースもあるようです(その代わり待遇は良かったりするのですが)。また逆に,インハウスに期待する役割が不明確なまま,とりあえず採用はしてみたものの,インハウスの使い方がわからず任せる仕事がないなどといったケースも耳にします。

しかしその一方で,自分がその企業で第1号の弁護士となるわけですから,自分の力で新しい分野を切り開き,確固たる地位を築いてその企業の法務部作り上げていくという面白さはあるかもしれません。このあたりは考え方次第といえるでしょうが,いずれにしても,いろんな企業の情報を収集しておくことは重要だと思います。

  

4 エントリシート・面接のポイント

まず,法科大学院や司法試験の成績についてですが,法律事務所の場合とは異なり,あまり重視されていないように思います。少なくとも,ぼくがエントリーした企業では,大学学部・法科大学院の成績証明書の提出は求められませんでしたし,司法試験の成績表すら提出しなくていい企業もありました。

 

逆に,語学の成績(英語・中国語)については,エントリーした全ての企業で提出を求められ,面接でも話題になったので,それなりに重視しているのかもしれません。したがって,語学以外の成績に関しては,あまり気にする必要はないでしょう。

 

企業の就活していて強く感じたことは,エントリーシートでも面接でも,つまるところ,企業側が聞きたいことはたった一つだけなのだということです。

 

それは,「なぜその企業で弁護士として働きたいと思うのか」ということです。
 

ただ,少し分析的に見てみると,この問いに答えるためには,少なくとも以下の3つの点について回答を用意しなければならないように思います。

 

①そもそもなぜ「弁護士(法曹)」になろうと思ったのか?

②なぜ「企業内で」弁護士をやりたいと思ったのか?

③なぜインハウスとして「その企業(業界)で」働こうと思ったのか?

  

①そもそもなぜ「弁護士(法曹)」になろうと思ったのか?

司法試験受験生であれば,必ず弁護士や法曹を目指そうと思った理由があるはずです。それが最初から企業法務に関連したものであれば問題ないのですが,そうでない場合には(例えば,ぼくは当初刑事弁護人を志していました),なぜ企業法務へ興味を持つに至ったのかを説明する必要があるでしょう。

 

②なぜ「企業内で」弁護士をやりたいと思ったのか?

最初から企業法務に興味があった人であれ,勉強を開始してから企業法務に興味を持つに至った人であれ,企業法務に携わる手段として最初に考えるのは,企業法務系の法律事務所に勤務することでしょう。最初から法律事務所ではなく企業に行こうと考える人は,おそらくいないのではないかと思います(もっとも,今後はそういう人も出てくるだろうと思います)。少なくとも,ぼくはそうでした。

 

にもかかわらず,現在インハウスに興味を持つに至ったのであれば,それには必ずきっかけや理由があったはずです。それを,企業は聞きたいのです。法律事務所の弁護士と企業内の弁護士との役割を比較する際には,例えば,①紛争解決⇔紛争予防,②整えられた事実関係⇔生の事実関係,③第三者的立場⇔当事者的立場,といった視点で整理してみるといいでしょう。

 

③なぜインハウスとして「その企業(業界)で」働こうと思ったのか?

最後に,インハウスといっても企業によって期待される役割や業務内容は異なるので,なぜその企業・業界を志望するのかということを説明する必要があります。

 

志望理由を述べる際に注意していただきたいのは,「大型M&Aが多い」「知財訴訟が多い」「渉外取引が多い」などといった法務マターへの興味だけに拘泥しているようでは,ちょっと視野の狭い人物に見えてしまうということです。法務は,企業にとってはどこまでいっても「手段」であって,それ自体が「目的」とはなりえません。目的と関連付けることなく,「手段に興味があります!」ということだけを前面に出しても,採用側としては「じゃあ法律事務所にいけばいいじゃん」と思ってしまうわけです。

 

法務はあくまでも手段であるということを理解した上で,法務マターへの興味を,その企業の事業内容や経営方針,商品・サービスそのものと関連付けて示すことができれば,視野の広い人物であるという評価を得られるでしょう。

法律からは少し離れて,「そもそもなぜ大型M&Aを頻繁に行う必要があるのか」,「知財訴訟で問題となっている製品はその企業の経営戦略上どういう意味を持つか」,「外国企業を選んで取引している理由な何か」,などといった点に思いを巡らせてみるといいかもしれません。大規模企業法務系法律事務所の就活と同様,日ごろから日経新聞等を読む習慣を付けておくとよいでしょう。

 

5 適性試験の対策

企業の就活をしていて最もイヤだったのが,いわゆる適性試験です。
 

どういう趣旨で行っていて,どの程度選考に影響を及ぼしているのかもよく分かりませんが,インハウスになろうとする以上,避けて通ることはできません。選考上の位置づけは企業により異なるとは思いますが,ぼくの経験上,概ね次のように考えておけばいいかと思います。

まず,面接の前に適性試験が実施される場合には,試験結果を選考上それなりに考慮していると考えてよいでしょう。おそらく,多数の応募者を形式的に絞り込むために実施しているものと考えられます。したがって,選考フローがこのようになっている場合には,しっかりと適性試験の対策を行っておく必要があります。

 

これに対し,面接の後に実施される場合には,人事管理の便宜上行っているものにすぎず,選考にはほとんど影響を与えていないと思われます(面接の段階で採否はほぼ決定しています)。とはいえ,あまりにも点数が悪いと具合が悪いでしょうから,適性試験の対策もある程度はしておく必要があるでしょう。

 

実施される適性試験の種類は企業によって異なりますが,インハウスの募集企業ではSPIとGABを採用しているところが多いです。GABは総合商社が主に採用しており,それ以外の企業はSPIという感じですが,詳しくは各就職情報サイトや適性試験関係の書籍で確認して下さい。

 

出題内容としては,大雑把に言えば法科大学院進学時に受験した適性試験をもう少し算数っぽくして,若干時間に余裕を持たせたような感じです(ただし,GABは時間がかなりタイトです)。

 

 新たな知識や技能の習得が必要な試験ではないので,2週間程度問題演習をして慣れれば十分に対応が可能であると思います(少なくとも相対的には浮き上がることができます)。

 

 オススメの書籍として,以下のものを挙げておきます。

 

司法試験が終わったのにまた試験か・・・と辟易してしまうところですが,こればっかりは仕方がないので,しっかり対策をして臨みましょう。

 

6 インハウスの待遇について

最後に,これまであえて触れてこなかった待遇に関して述べておこうと思います。

 

一般的には,新人インハウスの給与は,新人法律事務所勤務弁護士の給与よりも低いと考えられているように思います。ぼくもそのように考えていましたし,最初から待遇で選ぼうとは考えていなかったので,正直なところインハウスの給与にあまり期待はしていませんでした。

 

ところが,実際に就活をしてみると,思ったほどそうでもなく,法律事務所よりもむしろ一般企業の方が年俸ベースでは高いところもあることが分かりました。もちろん,それでも大規模企業法務系法律事務所には遠く及びませんが。笑

 

ぼくは,法律事務所から2つ,一般企業から2つの内定をいただいたのですが,その際提示された年俸額を序列化すると,一般企業A > 法律事務所B > 一般企業C >法律事務所D という感じでした。ただ,上記の比較はあくまでも年俸ベースであり,企業の場合はボーナスの割合が高いので,月々の手取りという意味では,法律事務所の方が高額といえるかもしれません。

 

具体的な金額を示していないのであまり参考にならなかったかもしれませんが,個人的な考えとしては,自分として最低限確保したい収入を決め,それを上回る収入を得られる法律事務所・企業であれば,あとはシンプルに仕事内容が面白いと思えるかどうかで決めればいいのではないかと思います。

 

法曹資格を取得するためには莫大な金銭的負担がかかり,少なくない借金をかかえている人も多いとは思いますが,たかだか1年目の年俸に目を奪われて就職先を選ぶのはちょっとつまらないような気がします。ぼくも偉そうなことをいえる立場ではありませんが,目先の利益ではなく,10年後何をしていたいか,どういう自分でありたいかを見据えて,就職先は考えたいものです。

 

以上,インハウスの就職について書いてみました。

 

司法試験受験生・司法修習生の就職活動②〜大規模企業法務系法律事務所 ※旧ブログ記事転載

1 「大規模企業法務系法律事務所」とは?

一般に「大手事務所」「大手渉外事務所」などと言われますが,本稿では,さしあたり下記の法律事務所を「大規模企業法務系法律事務所」と定義して話を進めていきたいと思います。
 
 【東京】(以下,「東京5大事務所」といいます)
 ・西村あさひ法律事務所(http://www.jurists.co.jp/ja/
 ・森・濱田松本法律事務所(http://www.mhmjapan.com/
 ・長島・大野・常松法律事務所(http://www.noandt.com/
 ・アンダーソン・毛利・友常法律事務所(http://www.amt-law.com/
 ・TMI総合法律事務所(http://www.tmi.gr.jp/
 
 【大阪】(以下,「大阪4大事務所」といいます)
 ・大江橋法律事務所(http://www.ohebashi.com/
 ・北浜法律事務所(http://www.kitahama.or.jp/
 ・御堂筋法律事務所(http://www.midosujilaw.gr.jp/
 
 なお,ここに挙げられていない事務所であっても,後述の採用スケジュールや留意点があてはまる場合があります(例えば,ベーカー&マッケンジー法律事務所,シティユーワ法律事務所,その他外資系法律事務所など)。
 

2 大まかな採用スケジュール

 《法科大学院最終学年次》 
 【4月〜6月】
 サマクラ応募・面接(東京)
 ※大阪でも一部サマクラ募集あり
 【7月〜8月】
 サマクラ(東京・大阪)

 

 《司法試験受験年》
 【4月〜5月】
 個別訪問応募(東京)
 サマクラ応募・面接(大阪)
 【6月】
 個別訪問(東京)→2回〜3回で内定
 サマクラ(大阪)→優秀者には内定
 【7月】
 東京5大事務所で内定がほぼ出そろう
 サマクラ(大阪)→優秀者には内定
 【9月】
 司法試験成績優秀者のみ個別訪問(東京)
 個別訪問開始(大阪)
 

3 サマークラークの重要性

(1)サマークラークとは?

大規模企業法務系法律事務所への就活を有利に進めるにあたって,最も重要なのが「サマークラーク」(サマクラ)への参加です。
 
サマークラークとは,主に企業法務系の大規模事務所において1週間程度,給与をもらいながら就業体験をすることをいいます。名目上は就業体験(研修)となっていますが,実質的には法律事務所の採用活動の一環として非常に重要視されています。特に東京5大事務所に内定をもらうためには,法科大学院在学中にサマクラに参加していることがほぼ必須であるとも言われています。
 
 このサマクラで優秀さをアピールすることができれば,司法試験終了直後に個別訪問に呼ばれ,その場で内定がもらえることもあるようです。ただ,サマクラに参加していなくても,自分から応募すれば個別訪問に呼んでもらえることはあるので(ぼくがそうでした),東京5大事務所を志望される方はあきらめずに個別訪問に応募してみましょう。
 
大阪4大事務所の中にも法科大学院在学生向けサマクラを実施しているところがありますが,内定への影響力は東京5大事務所ほどではないようです。大阪4大事務所の場合は,むしろ司法試験終了後のサマクラが重要です。こちらは今からでも間に合うので,積極的に応募してみましょう。
 
(サマクラ募集事務所の探し方については後述)
 

(2)サマクラの内容 

サマクラでは,訴状や準備書面等の起案,契約書のチェック,法令・判例のリサーチといった課題を与えられます。
サマクラの課題については,①参加者全員に同じ課題を与える場合と,②指導担当者の裁量でその都度適当な課題を与える場合があります。①の場合は起案や検討の結果を,②の場合は結果そのものよりも課題に取り組む姿勢やプロセスを重視しているということでしょうか。いずれにしても,一生懸命に取り組んで能力や意欲をアピールする必要があります。
 
また,短期間ながら実際の職場で一緒に過ごすということは,
 
  ・あいさつができるか
  ・時間を守れるか
  ・人の目を見て話せるか
  ・事務員にも礼儀正しい振る舞いができるか
  ・身だしなみは整っているか
  ・食事や飲み会のお礼を言えるか
  ・飲み会で自分から話題を切り出せるか
  ・自分から質問や報告・相談ができるか
 
といった,社会人としてのマナーも当然見られているということです。
 
 大規模法律事務所としては,ただ数年間起案やDD(デューディリジェンス)のマシーンとして働いてくれる人が欲しいのではなく(そういう事務所もあるかもしれませんが…),ゆくゆくは新しいクライアントを開拓して,パートナーとして事務所の経営を担ってくれる人材が欲しいわけです。そうであれば,法科大学院の成績や起案の能力はもちろん重要ですが,それだけではなく,人間的な魅力も備えていなければ内定を得ることは難しいでしょう。
 
 要は,「こいつと一緒に仕事をしたい」「こいつなら自分の大事なクライアントに合わせても大丈夫だ」「こいつは将来新しいクライアントを開拓していってくれるだろう」という評価をもらうことが重要だということですね。
 

(3)サマクラ募集事務所の探し方

大阪4大事務所については,現時点(平成26年5月19日)でいずれもサマクラの募集をしているようです。詳細は前述のHPを参照してください。
 
また,その他の事務所のサマクラについても「アットリーガル」(http://www.atlegal.jp/list.php)で随時情報が配信されていくかと思いますので,まだ会員登録されていない方はすぐに登録しましょう。ただ,アットリーガル等で情報配信せずに,ひっそりと事務所HPで募集を開始する事務所もありますので,注意が必要です。
 以下の事務所はアットリーガルで配信されなくてもサマクラを募集する可能性がありますので,興味のある方はこまめにHPをチェックしましょう(必ずしも網羅的ではありませんのでご了承ください)。
 
 ・三宅法律事務所(http://www.miyake.gr.jp/
 ・色川法律事務所(http://www.irokawa.gr.jp/law/
 ・関西法律特許事務所(http://www.kansai-lp.com/index2.html
 ・きっかわ法律事務所(http://www.kikkawalaw.com/
 ・共栄法律事務所(http://www.kyoei-law.com/
 ・協和綜合法律事務所(http://www.kyowa-sogo.gr.jp/
 ・第一法律事務所(大阪)(http://www.daiichi-law.jp/
 ・中央総合法律事務所(http://www.clo.jp/
 ・堂島法律事務所(http://www.dojima.gr.jp/
 ・はばたき綜合法律事務所(http://www.habataki-law.jp/
 
 サマクラの選考は,基本的に書類の到着順に随時行われるので,少しでも早く応募することが重要です。そして,早く応募するためには,言うまでもなく迅速な情報収集が欠かせません。興味のある事務所があれば,その事務所がサマクラ(あるいは個別訪問)を募集していないか,こまめにチェックする習慣をつけましょう。
 

4 成績・外国語能力の重要性

大規模企業法務系法律事務所の個別訪問やサマクラに応募するにあたって,必ず申告を求められるのが,法科大学院の成績や語学のスコアです。法科大学院の成績に関してはいいに越したことはありません(そして今更どうにもなりません)が,語学力に関しては,事務所ごとにトーンが異なるようです。
 
ある大阪4大事務所は,採用情報ページで外国語能力を選考上有利な事情として考慮すると名言していますし,その事務所のパートナーは「TOEICスコアが800点以上あれば『おっ』と思うし,少なくとも書類はちゃんと読もうと思う」とおっしゃっていました。他方で,ある東京5大事務所のパートナーは「今の英語力はそこまで重視していない。別に英語ができなくも他に光るものがあれば採用する。英語は実務に出ればできるようになるから」とおっしゃっていました。
 
どのくらい語学力が重視されているのか,実際のところはわかりません。ぼくの当時のTOEICスコアは785点という微妙なものでしたが,採用上有利にも不利にも働いた感触はありませんでした。
 
ただ,一つ言えるのは,今TOEIC等の語学スコアを持っていなくても,それだけで不採用になるわけではないということです。
 
というわけで,TOEICのスコアを持っていないからといって諦めることはありません!とにかく応募してみましょう!(ただ,面接ではTOEICスコアがないことをツッコまれる可能性がありますので,その際は現在勉強中などとうまいことを言って,少なくとも意欲は見せるようにしましょう。)
 
成績についても語学力についても,社会人経験者でない限り法科大学院修了生はみんな似たような経歴なので(失礼!),少なくとも書類選考段階では,数値で比較可能なところで優劣をつけざるをえない,というのが実情なのではないかと個人的には思っています。
 
なお,某法律事務所はイケメンを優遇しているというウワサがありますが,真偽の程は明らかではありません…(笑)。
 

5 面接(個別訪問)のポイント

 (1)個別訪問のスケジュール

東京5大事務所の個別訪問は,司法試験直後から一斉に開始されます。
 
法科大学院在学中のサマクラで高評価を得た人は,試験翌日に事務所側から呼び出され,そのまま内定をもらってしまうというから驚きですね。そういった例外的なケースを除くと,5月下旬から6月上旬までの間に1回目の個別訪問に呼ばれ,それを通過して2回目・3回目と回を重ねていくパターンが一般的です。多くの人は2回目か3回目の個別訪問で内定を得るようです。
 
1回目の個別訪問から2回目の個別訪問に呼ばれるまでの間隔は,ぼくの経験では早くて1週間以内,遅くて2週間以内です。連絡が電話で来る事務所もあれば,メールで来る事務所もあります。2週間を超えてしまうと,基本的には不採用になったと考えたほうがいいでしょう。ただ,まれに2週間以降でも連絡が来るケースもあるようです。
 
このように,東京5大事務所は応募から内定までが非常にスピーディーで,7月中にはほぼ内定が出揃ってしまうようです。
 

(2)面接の内容

東京5大事務所の個別訪問の面接官は,たいていは3人で,パートナー2名+アソシエイト1名の構成が多いように思います。

面接の内容自体は,特別なことを聞かれるわけではなく,お約束の「弁護士になりたいと思った理由」に始まり,「目指す弁護士像」「興味のある法律分野」「趣味・特技」「自分の長所・短所」「最近気になったニュース」といった一般的な質問が多かったように思います。事務所によっては,これらの質問を事前アンケートの形式にして回答を提出させ,それに基づいて面接をすることもありました。

 
ぼくの感触としては,しゃべっている内容そのものよりも,しゃべり方や態度(質問に端的に答えているか,自信をもって話しているか,相手の目を見て話しているか)を重視しているように感じました。

ただ,一度だけ,ぼくが知財に興味があると言ったら,職務発明を法人帰属とする改正案についてどう思うかという議論を持ちかけられたことがありました。その面接官は知財業界でも有名な先生だったので,ちょっと焦りましたが,そのトピックについては,数日前の日経新聞で記事が掲載されており,ぼくはそれを読んでいたので,ぎこちないながらも何とか事なきを得たのでした。(まあ,結果的には内定をもらえなかったのですが…(笑))

今思うと,本当に企業法務に興味があるのであれば,少なくとも日経新聞くらいは読んでいるだろうということで,ちょっと試されていたのだろうと思います。そういうわけで,企業法務系事務所を志望されるのであれば,日経新聞くらいは読む習慣を身につけていた方がいいかと思います。

 
 その他の留意点としては,(東京5大事務所の面接に限らずですが)やはり最後の質問コーナーで積極的に質問をした方がいいということです。質問事項としては,単に自分が知りたいというだけではなく,相手も気持ちよく語れることを聞くべきです。
例を挙げるとすれば,下記のような質問でしょうか。
 
 ・パートナーとして,どういうアソシエイトなら重要案件を任せたいと思うか?
 ・クライアントからの信頼を得るにはどのような努力が必要か?
 ・先生はどうやってその分野のクライアントを獲得してきたのか?
 ・案件に失敗した場合にクライアントとのコミュニケーションで気をつけていることはあるか?
 
そして,こういった質問をすると,キレ者の先生ほど結構な確率で「あなたはどう思う?」と返してきます(笑)。そうなったらある意味こっちのものです。自分の思いを遠慮なくぶつけてみましょう。質問コーナーを利用して,面接で語りきれなかったことを最後にカバーするわけです。
 ここで面接官の琴線に触れることを言えれば,良い印象を残すことができるでしょう。
 

6 「とりあえず応募してみる」のススメ

この記事をご覧になっている方の中には,大規模企業法務系法律事務所には興味がないという方もいらっしゃるでしょう。しかし,ぼくとしては,そういう方であっても,大規模企業法務系法律事務所の個別訪問やサマクラに「とりあえず」応募してみることをおすすめします。
 
応募した結果がどうなったとしても,あなたが失うものは何もないからです。
 
たとえある事務所の選考に通らなかったとしても,他の事務所の就活には何ら影響しません。むしろ,エントリーシートを書いた経験や面接を受けた経験はその後の就活に大いに役に立つはずです。エントリーシートも面接も,結局は場数が大事ですからね(笑)。
 
金銭的な面についても,大規模企業法務系法律事務所の個別訪問であればほとんどの事務所が交通費を支給してくれますし,サマクラであれば1週間で3万円〜5万円ほど稼ぐことができます。
 
そもそも,「興味がない」かどうかは,しっかり自分の目で見てみなければわからないはずです。勝手なイメージやうわさで法律事務所の良し悪しを判断するのは本当にもったいないことです。興味がないと思っていた事務所であっても,実際の案件に触れてみたり所属弁護士さんの話を聞いたりするうちに,考えが変わってくることもあるかもしれません。
ぼくも法科大学院時代には考えもしなかったところに就職することになったクチなので,あえて言いますが,人生はどうなるかわかりません。自分から積極的に動いていけば,きっと素敵な出会いが待っているはずです。
 
是非,大規模企業法務系法律事務所の個別訪問やサマクラに応募してみてください!
 

司法試験受験生・司法修習生の就職活動①〜総論 ※旧ブログ記事転載

1 本稿の趣旨

今年(平成26年)の司法試験を受験されたみなさん,本当にお疲れ様でした。

長い間懸命に受験勉強に励んできたこと,5日間にも及ぶハードな試験を乗り越えたことについて,まずはどうぞ自分を褒めてあげてください。よく頑張りました。

 
さて,大イベントが終わり,合否のことはひとまず忘れて,ゆっくり休みたい・遊びたいという気持ちもあることでしょう。ただ,その一方でみなさん気になっていることもあるのではないでしょうか。今この記事を読んでいることが,その証左でしょう(笑)。

 

 そう,就職活動です。

 

ここ数年,司法修習生・新人弁護士の就職難が叫ばれています。就職難の具体例(「即独」「軒弁」「未登録者」など)を長々と述べることはしませんが,現在修習生である自分の体感としても厳しい状況に間違いはないようです。

 

就職活動については,ぼくもそれなりに落とされましたし,焦りましたし,悩みました。しかし他方では,学ぶことも本当に多く,自分のやりたいことや目標を今一度見直すきっかけにもなりました。

そこで,今から就職活動をされるみなさんに少しでも情報を提供できればと思い,司法試験受験生(合格前)・司法修習生(合格後)の就職活動について記事を書いてみたいと思います。

 
ぼく自身の拙い経験が中心になるため,情報の正確性は保証できませんが,気楽にお読みいただければと思います。
 

2 私の就職活動の経緯・結果

就職活動についてはいろいろとありましたが,ぼくは法律事務所から2つ,一般企業から2つの内定をいただくことができました。自分で言うのも何ですが,大規模事務所から小規模事務所・個人事務所,一般企業まで比較的幅広く見て回ったのではないかと思います。

また,決して100%自分の思い通りにいったわけではありませんが,結果的には落ち着くべきところに落ち着いたのかなとも思っています(まだ働いていないのであれですが…(笑))。

 
その経緯はだいたいこんな感じでした。

 

 【5月】

 司法試験終了
 大阪大手事務所にサマクラ応募・面接
 東京5大事務所等の個別訪問に応募

 【6月】 

 東京5大事務所等の個別訪問(内定には至らず)

 【7月】

 大阪大手事務所にてサマクラ(内定には至らず)
 大阪企業法務系事務所にてサマクラ(内定には至らず)

 【8月】 

 大阪大手事務所にてサマクラ(内定には至らず)
 その他ちょくちょくと事務所説明会や面接など

 【9月】

 特に就活関係のイベントはなし
 合格発表後,複数の事務所に応募・面接

 【10月】

 東京三弁護士会合同就職説明会に参加し,インハウスにも興味を持つ
 修習地が地元に決定
 その他ちょくちょくと面接や説明会など

 【11月】 

 企業法務系法律事務所から内定
 合同説明会で興味を持った企業に応募・面接

 【12月】

 一般企業2社(総合商社・通信)から内定
 一般民事系法律事務所から内定

 【1月】

 最終的に行くところを決め,就職活動終了

 

3 本稿の構成について

以下の記事では,まず「総論」として,提出書類(エントリーシート等)の書き方や面接のポイント等,事務所の規模や専門分野にかかわらず共通する点について解説します。その後「各論」として,事務所の規模・専門分野や募集形態に応じた個別の留意点を述べていきたいと思います。

【書評】中村宏之著『世界を切り拓くビジネス・ローヤー ー西村あさひ法律事務所の挑戦』

書店で見かけたので、さっそく購入。ざっと通読しました。

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ベテラン新聞記者の方が、西村あさひ法律事務所(以下「NA」)の弁護士12名+秘書・パラリーガルへのインタビューを通じて「ビジネス・ローヤー」の実態に迫るという、(少なくとも私の知る限り)今までありそうでなかった書籍です。

 

12名の弁護士のインタビューはどれも非常に面白いのですが、その中でも特に印象に残ったのが、NAのマネージングパートナー・保坂雅樹弁護士のインタビューです。

 2008年にリーマン・ショックが起きて、2009〜10年は日本の我々のような法律事務所の業務もかなり停滞したというのが実感でした。また、企業側のリーガルフィー(弁護士報酬)の感覚が世界規模で大きく様変わりしました。法律や経済取引自体は常に複雑化し、リーガルニーズは増えているといえるかも知れませんが、弁護士事務所に支払うコストに関しては非常にシビアになっています。これは全世界的に法律事務所が格闘している課題です。特にリーマン・ショック後は顕著です。また大きな流れとして、企業内弁護士の増加が欧米では進んでいて、外部の弁護士との棲み分けの問題も出ています。日本でも企業内弁護士は増えています。少なくとも現時点では直ちに法律事務所の脅威になるという段階ではないと思っていますが、時間の問題なのかもしれません。

 そのほかに世界的に議論されているは、従来法律事務所でなかったプレーヤー、典型的なのは会計事務所などが法律事務所をつくるといった動きです。日本においても国際的な大手会計事務所が日本に連携する弁護士事務所法人をつくって、実際に活動を始めています。そういう意味でプレーヤーの多極化や拡大はあると思います。

 もっと根本的なのは、やはり日本の人口の減少とそれに連動する経済の縮小問題です。日本で人口が増えて、経済規模も増えていけば、大局的に見ればリーガルマーケットも拡大するはずですが、その流れとは逆になっている。(本書16〜18頁)

 

同氏は、リーマン・ショック以降のリーガルマーケットにおける大きな変化として、①リーガルフィーに対する企業側の感覚の変化、②新たな競合プレーヤーの出現(企業内弁護士・大手会計事務所)、③人口減少に伴う日本経済の縮小の3つを挙げています。

 

現状だけを見れば、①日系事務所のフィーはいわゆる外資系の法律事務所に比べればまだまだ安いですし、②企業内弁護士も会計事務所系列の法律事務所も、まだまだ日系の渉外法律事務所に質的にも人数的にも遠く及びませんし、③日本企業は手元資金を持て余しているのでしばらくはアウトバウンド案件の需要が続くでしょうから、直ちに日系渉外法律事務所が窮地に立たされるという状況にはないとは思います。

 

しかし、長期的に見れば、 上記の3つは必ず日系の渉外法律事務所を揺るがす脅威になるだろうなと、私のような若造の肌感覚としても感じているところです。個人としても、組織としても(現状私は組織を率いる立場にはありませんが笑)、10年後・20年後を見据えた戦略を考えていかなくてはなりませんね。。。

 

さて、もう一つ心に響いたのが、南賢一弁護士のインタビュー中のこの一節。

私は、師匠の松嶋英機弁護士から、入所当時、①若いうちはまず正論を考えろ、それを突き詰めたうえで解決策を考えろ。②細かいことをいちいち相談するな。本当に困ったときは相談に来い。そのときは責任を持って解決するから、それまでは自分で考え抜いて解決しろ。③地道にまじめにやっていれば、そのうち自然にその業界で有数の人間になっているものだ。あせることなく一所懸命まじめに案件に取り組め。④債権者は敵ではない。債権者をはじめとするクライアント以外の利害関係人の立場にも配慮して物事を考え、全体感を持って解決策を模索せよ、と言われました。(本書127頁)

 

うーん、いい言葉ですね。松嶋先生といえば、NAとして一つになる前のときわ総合法律事務所のファウンダーであり、倒産法分野のパイオニア的な先生ですが、やはり重鎮の先生の言葉には重みと含蓄があります。(NAの所属ではありませんが)私も、この言葉を肝に銘じて日々の業務に励んで行きたいと思いました。

 

めちゃめちゃざっくりですが、以上です。

ちょうど大手法律事務所の個別訪問やサマクラの募集が始まる時期ですので、ビジネスローヤーを目指す司法試験受験生やロースクール生の方は、本書を読まれてみてはいかがでしょうか。

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